- フリー
- ルート
フランコ・クックソン、世界最難スラブの一本、The Meltdown(9a)第3登
grimper.com 訳=羽鎌田学
この投稿をInstagramで見る
3月上旬、イギリス人クライマー、フランコ・クックソンが、ウェールズ北西部グウィネズ州トゥス・マウルにあるスレートの岩場で、イギリス最難スラブルートの第3登に成功した。その名は、The Meltdown(9a/5.14d)。フランコは、コロナ禍が始まる前に、既に同ルートに手をつけていたのだが、コロナのまん延によりトライ中断。そして、状況が落ち着いたこの3月、やっと念願のRPに漕ぎつけたのである。ここでは、UKCとのインタビューで彼がThe Meltdownについて語った言葉を要約しながら、そのクライミングを紹介する。
「本当に素晴らしいルートでした。難しいから素晴らしいわけでもなく、また自分を奮い立たせるために、これは絶対にいいルートだぞ、と自分に思い込ませていたからでもありません。ともかくムーブが信じられないほど面白いからなのです」と、フランコはインタビューの中で強調している。
The Meltdownを設定しボルトを打ったのは、イギリスクライミング界の大御所のひとり、ジョニー・ドーズ。1985年のことだ。初登はなんと27年後の2012年、ジェームズ・マカフィーが達成。第2登は2018年、スペイン人クライマー、イグナシオ・ムレーロ。このイグナシオは、2020年にナーレ・フッカタイバルとヨセミテのDawn Wallをトライしている。
今回9aをRPしたフランコ、実はスポートルートでは8台は一本も登っていない。それでいきなり9aに手を出すなどとは、普通は考えられないのだが。この衝撃的な点について、普段は専らトラッドとボルダリングで活躍する彼は、インタビューの中で次のように語っている。「スポートクライミングを計画的に捉えて実践していないからですね。普段はほとんど一人で登るか、上からのロープにセルフビレイを取ってハードなムーブをトライすることばかりやっているのです」
またインタビューで、非常にテクニカルで美的なムーブが凝縮したルートだと、彼は言っている。ルートは、微かに寝た壁に引かれ、足のクロス、ピンチ、そして独創的でたぐい稀なムーブを交えて登っていく。足を高い位置のホールドに乗せるために手で持ち上げるというユニークなムーブまで出てくる。またそれらムーブの構成は複雑で、おまけに足は滑りやすい。彼はその微妙なクライミングについて、以下のように印象的な言葉で説明している。
「ムーブを体に染み込ませたら、後は壁の表面を舐めるように登っていくだけです。時には、左足のつま先を極小エッジに乗せ、右手で高いところのガストンを捉えて、その両者の不思議な繋がりを頼りにして、信じて、立ちこんでいくのです。それはまさに浮き上がっていく感覚です。その得も言われぬ瞬間は、言葉では説明できません。事前に定めたミリ単位の動きを順次こなしていくことが、なぜそんなにも価値があるのかも説明しようがありません。理屈抜きですね」
関連リンク
- 【動画紹介】BD Athlete Carlo Traversi On the Second Ascent of Meltdown (5.14c)
- カルロ・トラベルシ、Meltdown 5.14c を第2登