石川県白山・百四丈滝 初登

写真=山野本陽平
文=編集部、門田ギハード

2025年3月23日、石川県白山加賀禅定道・百四丈滝を門田ギハードが開拓・初登した。

百四丈滝は日本三霊山白山の中腹、標高1800m付近にあり、その落差は90m。岩壁が大きくえぐれているため国内最大級の「裏見の滝」とされている。また、冬には世界的にも稀な氷壺ができることでも知られ、多くのメディアにも取り上げられている滝でもある。

2月中旬に入山したものの大寒波襲来により、滝に近づくこともできず1週間ほど山の中で停滞を余儀なくされ一度は下山。3月15日に再挑戦し、8日間の開拓期間(2日間の停滞日含)を経て3月23日に初登した。

初登ラインは氷壺と積雪により滝の公表値よりやや短く、長さ約60m(雪原まで+10m)。地面から50㎝程度浮いた細い氷柱からスタートし、時折ハングする立体的に連なった氷柱を20mほど登る。滝の流路右沿いを走る最大傾斜約130度のクラック主体の岩セクションを40m登り、最後は滝の落ち口の崩れそうなスノーブリッジを慎重に越える。そこから10mほど雪壁を登れば清浄ヶ原の雪原に出る。

スタイルとしてはラペルによる開拓。ハーケン、カム、ナッツのプリセットによるピンクポイントでの初登である。ボルトレスのミックスクライミングルートとしては国内最難ルートの誕生と思われる。

以下は門田ギハードのコメント。

「百四丈滝の挑戦は1年以上前から準備をしてきました。去年の4月と9月に現地に偵察にも行き、ルートのイメージとそれに向けたトレーニングも積んできました。しかし、4月の偵察の時に下山中に転倒し、右膝内側側副靭帯を損傷。半年間満足にクライミングができなくなったりと、挑戦の日々は本当に大変なことの連続でした。2月の敗退時には厳冬期の山の厳しさを突きつけられ、壁を登るトレーニングだけを積んでいた私は自分の甘さを痛感しました。

それでも今回、登攀に成功できたのはパートナーを務めてくれた高橋敬太郎さんや荷上げを手伝ってくれた仲間のおかげでした。滞在していた避難小屋から滝までの往復5時間のアプローチのラッセルや荷上げを積極的にやっていただき本当に助かりました。また普段から応援してくれる多くのクライマー仲間の存在が私の背中を押してくれました。関わってくれたすべての皆さんに本当に感謝しています。

ルートについては、本来オールナチプロでのRPを狙っていましたが、岩質がもろく、クラックも氷が詰まったり、コケだらけだったりとプロテクションのセットできる場所もコンディションも非常に悪く、理想と現実の狭間で葛藤した結果ピンクポイントという形になりました。

ハーケンも数枚打ったものの、どれもまったく効いておらず、回収の時は3回たたけば簡単に抜けるほどでした。ほとんどのプロテクションが墜落荷重には耐えられそうにないもので、絶対に落ちてはいけない一発勝負のクライミングをしっかりと集中して決めることができてよかったです。

百四丈滝を最初に登るのなら流路ギリギリを下から上まで1ピッチで直登する。そして残置物を一切残さないクリーンなクライミングをしたいという気持ちをずっと持ち続け、最も理想的で攻撃的なラインを登り、残置物ゼロで下山できたことは本当にうれしく思います。

自分の未熟を痛感し、クライマーとしてさらに成長したいと思わせてくれた百四丈滝登攀は私にとって大きな財産となりました。アイスクライミング選手として今年10年目の節目であり、ここがさらなる高みへのスタートという意味を込めてルート名を『狼煙(のろし)』とさせていただきたいと思います。

グレードに関して、これまで登った海外のルートを基準とするとM10+/WI6+が妥当のように思います」

また、高橋敬太郎のコメントは以下のとおり。

「百四丈滝冬期登攀は、登攀コンディションを重視するとアプローチが困難になり、アプローチコンディションを優先すると登攀不能なコンディションになってしまうという葛藤から始まりました。2月の挑戦では悪天と雪崩に阻まれ、さまざまな対応を試みるも滝に到達できずに終わり、登攀のみならず行程全体の困難さが目立つ結果となりました。

その後3月の再トライでは無事滝に到達できたのですが、今度は気温上昇とともに崩れゆくルートを見ながら時間との戦いという側面もあり、粘った結果ギリギリのタイミングを掴めたものと考えております。

そんな中、開拓作業に必要な時間と登攀コンディションがかろうじてクロスオーバーする、ここしかないというタイミングに一撃したギハード氏のクライミングは魂を揺さぶられるものでした。手足を対角線いっぱいに伸ばしてダイナミックに求めるホールドがある一方、子供の肌を撫でるような繊細なタッチも必要とされ、その臨場感がロープを介して伝わってきます。十分なプロテクションとは言い難い状況のなか、はたして重力方向はどちらなのかと考えさせられるような百四丈滝の壁をじりじりと登っていく様子は、映画でも見ているような非現実さがあり、完登後の歓喜が百四丈滝のあちらこちらに響いていた情景が忘れられません」

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