コチャモー渓谷に新たなフリー化課題と目されるEl Bonsai(1000m、8b+?)誕生

desnivel.com
訳=羽鎌田学

ディエゴ・ディアス、アンドレス・セーヘルス、マチュー・ミケール、ホセ・イグナシオ・アラーテ、フランシスコ・ピヌエールが、チリ南部のロス・ラゴス州ジャンキウエ県コチャモー渓谷にある岩峰、セロ・カピクーアで、今後フリー化の絶好の対象となることが確実な25ピッチの壮大なルートを開拓初登した。そのうちの16ピッチは全く新しいラインで、フリー化の暁にはその半数のグレードは8台(5.13b以上)になると彼らは予想している。

チリのコチャモー渓谷は、長い間、世界のマルチピッチルートやビッグウォール・クライミングのシーンで中心的な地位のひとつを占めてきた。そのなかでも、セロ・カピクーアの壁は最も象徴的な存在で、その西壁に引かれたPicaflor(1050m、8a+/5.13c)などの複数のルートが独自の輝きを放っている。最近、その高さ1km級の巨大な壁に、コチャモー渓谷全体で最もハードな一本となる可能性を秘めた新しいラインが追加された。

それは、前出の5人のチリ人とフランス人からなるパーティーが創り上げた作品、El Bonsaiだ。ルートの長さは1000mにも及び、かつ高難度のピッチが連続するルートだ。開拓者たちは、このルートは完全なフリー化が可能で、想定される最難ピッチのグレードは8b+/5.14aほどになり、その計25ピッチのうちの少なくとも8ピッチは8台(5.13b以上)になると見積もる。

長年の夢

ディエゴ・ディアスはSNS上で次のように語っている。「それは長い間、私の個人的な夢でしかなかったのですが、今シーズンのある日、アンドレス・セーヘルスと電話で話していた時に、突然具体化のきっかけが生まれたのです」。その夢とは「印象的なカピクーアの壁に新しいルートを開くこと」だった。

アンドレスは、その日の午後、チリ中部の彼が活動拠点としているプコンの街から早速やって来た。「私たちはすべての装備を慎重に準備し、翌日には、その夢を追いかけて渓谷に向けて出発しました」と、ディエゴは言う。「偶然にも、今シーズン数週間前に同じセロ・カピクーア西壁にあるPicaflorを再登したばかりのフランス人クライマーのマチュー・ミケールがアンドレスの家にいて、彼もこの遠征に一枚加わってきました」

この種の企てがもたらす障害は、クライミング自体の難しさをはるかに超えている。「ジャングルのど真ん中で1000m長のフリークライミングルートを開拓することは、特に自分たちだけで食料とか装備とかの運搬、補給等の問題を解決しなくてはならない以上、簡単ではありません。先ずは壁近くのベースとなるキャンプ地までの、続いてそこから目的とする壁のルートの取付きまでの長いアプローチで、背にして運ばなければならない装備の量は相当なものなのです」と、ディエゴ・ディアスは説明する。

途中、ホセ・イグナシオ・アラーテとフランシスコ・ピヌエールが遠征に加わることになり、チームが完成した。「彼らの参加が、この夢を実現するためのキーとなりました」

ハードで美しい新たなライン

「アプローチでは大変苦労しましたが、その後は、とても楽しくピッチを伸ばしていくことができました」と、ディエゴは説明を続ける。「ただ、私たちを待ち構えていた本当の試練は、フリーで登ることができるようにと何日もかけてクラックや壁の表面を掃除することでした。でも、それがどんなに大変だったとしても、ハードで美しい新たなラインを見出し、それを登っていく経験は、唯一無二のものでした」

地元チリ人クライマー、ディエゴは、「通称“カタルーニャ広場”(壁の途中の木の生えた顕著なバンド)から上部16ピッチは全く新しいラインで、それに加えて下部に新たに設定したより自然な取り付きからの数ピッチを含む計25ピッチからなるルートが完成しました」と説明し、「ルート全体をフリーで登ることは可能でしょう。でも、その試みはかなりチャレンジングなものになるでしょう」と続けた。その証しとして、彼は次のように述べている。

「実際いくつかのピッチでフリー化を試みたのですが、約半数が8a~8a+(5.13b~5.13c)の範疇で、8b+(5.14a)ぐらいになりそうなピッチも複数ありました」。そして、「コチャモーの他の壁同様、岩質は抜群で、正真正銘の5つ星ピッチがたくさんありますよ」と、彼は付け加えた。

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