パリ五輪 応援企画 スポーツクライミングを徹底解析<リード編>

文=植田幹也 イラスト=越井 隆

東京2020オリンピックから登場した スポーツクライミング。まだまだその競技自体に馴染みがない方も多いかもしれません。 この記事では観戦初心者の方に向けて、 スポーツクライミングの見どころやルールを紹介します。当ページでは、リードの見どころやルール、素朴な疑問などを解説

見どころ

スポーツクライミングは元々ロッククライミングの練習として登場したという歴史的経緯を踏まえると、 高いところを目指しどこまで登ることができるかを競うリードは花形と言えます。選手に問われる最も大きな要素は持久力であり、登り続けて疲労が限界に達している状況の中でのスタミナ、精神力、驚異的な粘りなどが見どころです。

また安全確保のクリップをどこでするか、疲労回復のレストを優先するか休まずに突っ込むか、などの選手の状況判断も見えるようになるとより一層観戦を楽しめるようになります。1トライしかできないため選手には非常にプレッシャーのかかる競技でもあります。

リードは伝統的にヨーロッパの国が強かったのですが、近年の日本チー ムの若手には世界トップを狙える実力選手も現れてきたので大注目です。

ルール

12m以上の壁で40手以上あるルートを制限時間6分間で登ります。トライ回数は1度だけでどこまで高く登ることができるかを競います。高さ12mというのはビルの4階程度に相当するため、落ちたときに安全確保できるよう、選手はロープを付けそれを途中の支点に掛けながら登っていきます。

到達高度に応じて上部ほど多くの得点が割り振られるルールになっていて、以下のように獲得得点が決まっています。

トップから数えて10手:1手につき4点
トップから11~20手:1手につき3点
トップから21~30手:1手につき2点
トップから31~40手:1手につき1点

例えばある選手が全体で50手あるルートの35手目まで進んだとします、すると各区間で以下のように得点を獲得します。

通常高度はスタートから数えますが、 獲得得点はトップから逆算して決まることに注意が必要です。

1~10手(トップから41~50手):0点
11~20手(トップから31~40手):1点×10手=10点
21~30手(トップから21~30手):2点×10手=20点
31~35手(トップから16~20手):3点×5手=15点

よってこの選手は合計45点を獲得します。

また次のホールドを掴むことができなくても、そのホールドへ明確な重心移動と共に手を伸ばしたとジャッジが認めた場合は+という高度が付き0.1点が追加されます。上記の例において35手から36手目への+が認められたとしたら、高度35+で45.1点を獲得します。

Q. 落ちたら危なくないの?

リードでは選手とビレイヤーがロープで結ばれ、選手はロープを支点に掛けながら登っていきます。ですので途中で落ちてもその支点を頂点として基本的に選手はロープからぶら下がる形になり、地面までは墜落しません。

ただしまだ支点の位置が高くない下部で不意に落ちたりすれば地面まで着いてしまうこともありえますし、長距離落下した場合などは地面まで墜落せずとも体をどこかのホールドにぶつけたりする可能性があるので怪我をするリスクがないとは言えません。

Q. 登る前に望遠鏡などを持ってなにをしているの?

オブザベーションと呼ばれるルートの下見をしています。ホールドの確認、ムーブの組み立て、選択肢の洗い出し、他の選手との相談などをしてどのようにルートを攻略するかを考えているのです。

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*当記事は、スポーツクライミングの観戦や始め方などが詳しく紹介されているクライミングビギナー向けムック「2024パリ五輪スポーツクライミング観戦ガイド #CLIMBING」の内容を一部編集・再掲載しています。

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