ブルック・ラブトゥ、史上初 9b+/5.15cを登った女性クライマーとなる

planetmountain.com
訳=羽鎌田学

ブルック・ラブトゥが、イタリア、アルコにあるExcaliburのレッドポイントに成功し、世界で初めて9b+を登った女性クライマーとなった。2023年2月にステファノ・ギゾルフィによって初登され、2025年2月にウィル・ボシによって第2登されたばかりのこの凄まじくハードな前傾壁ルートは、世界最難の一本として知られている。

アメリカ、コロラド州ボルダー市生まれのブルック・ラブトゥが、4月5日、イタリア北部、アルコ近郊の岩場でExcaliburの驚異的なRPを達成し、現代スポートクライミングの歴史に新たな1ページを刻んだ。2001年4月9日生まれの彼女は、24歳を迎える誕生日直前に、9b+を完登した世界初の女性クライマーとなったのである。スポートルートでは現在のところ9cが最難グレードではあるが、それでもExcaliburは、世界最難ルートの一本に数えられている。その上の9cルートとしては、Silence(2017年、アダム・オンドラ初登)、DNA(2022年、セバスティアン・ブワン初登)、そしてBIG(2023年、ヤコブ・シューベルト初登)が存在するのみである。

2023年2月3日にアルコに居を定めるステファノ・ギゾルフィによって初登された、この短いながらも強烈なムーブが続く前傾壁ルートは、今年初め、まさに初登から2年後の2025年2月3日にイギリス、スコットランド出身のウィル・ボシによって初めて再登され、そのグレードが確定したばかりであった。アダム・オンドラ、ヤコブ・シューベルト、ショーン・ラブトゥといったクライミング界のビッグネームもこのルートにトライしてきたが、現時点ではステファノ、ウィル、ブルック以外の全ての挑戦を跳ね返しているルートである。

クライミングの天才、ブルック・ラブトゥは、かつて共に世界で名の知れたクライマーを両親に持つ。

母親はアメリカ人クライマー、ロビン・アーベスフィールド。彼女は1980年代後半から1990年代前半にかけてワールドカップなどのコンペで活躍し、例えば1994年のアルコのロックマスター、1995年のスイス、ジュネーブでの世界選手権で優勝している。父親は、フランス人クライマー、ディディエ・ラブトゥ。彼も、1989年のアルコ・ロックマスターで優勝するなどロビンと同様にコンペで活躍する一方、フリークライミング勃興期にビュークス、ヴォルクスといったフランスの岩場で当時の最難ルートを数多く初登、再登している。そして、彼女の兄は、やはり傑出したクライマーであるショーン・ラブトゥ

そんな家庭に生まれたブルックは、幼少期からクライミングを始め、その後着実にグレードアップを重ね、アウトドア・クライミングで新たなベンチマークを打ち立てると同時に、コンペ・クライミングでも活躍している。昨年、2024年パリ・オリンピックのコンバインドで銀メダルを獲得したことは、大会のハイライトのひとつでもあった。その時の勢いは2025年にも引き継がれ、今年2月上旬には、米国カリフォルニア州ビショップのバターミルクで8B+のボルダー課題、Direct Northをたった1日で完登している。

今回のブルックの画期的な成果は、スポーツの限界に挑戦する女性たちが積み上げてきた業績を引き継ぎ、それをさらに発展させたものである。女性初の9bは、2017年にアンゲラ・アイター(オーストリア)が達成し、その後、ラウラ・ロゴラ(伊)、ジュリア・シャヌルディ(仏)、アナック・ヴェルホーヴェン(ベルギー)が続いた。しかし、9bから9b+への飛躍はまさに歴史的価値を持ち、ブルックの完登は単なる「目覚ましい」という言葉だけでは言い尽くせない偉業である。

完登後、ブルックは自身のインスタラムアカウントに次のように綴っている。

「親愛なるエクスカリバー、いろいろ教えてくれてありがとう。一目見て、私はあなたのとりこになったわ。あなたの容赦ない厳しさに惹かれたのよ。途中、私たちの関係は時と共に揺れ動いたわ。何の苦労もなく調和が取れているように感じる日もあれば、私たちは喧嘩したり、互いに声を荒げたりした日もあったわね。それでも、あなたが私を突き動かす様は、今までにないものだった。あなたは私に恐れと向き合い、淡い期待を捨て、かすかな信念の一つ一つを強固なものにするように強いたのよ。あなたは私に、疑念が自らを疑い始めるまで疑念に反駁することを教えてくれた。あなたは私にすべてを求め、そしてそれ以上のものを私に与えてくれた」

「この大きな目標の達成をサポートしてくれた皆さん、本当にありがとう。周りの人たちに、そしてこのルートが私の人生にもたらしてくれた繋がりに、限りなく感謝。それは言葉では言い尽くせないほど大切なものです」

女性クライマー初達成グレード
8c:ジョスネ・ベレシアルトウ(スペイン、バスク)、Honky Tonky、1998年4月、スペイン、オニャティ
8c+:ジョスネ・ベレシアルトウ(スペイン、バスク)、Honky Mix、2000年6月、スペイン、オニャティ
9a:ジョスネ・ベレシアルトウ(スペイン、バスク)、Bain de Sang、2002年10月、スイス、サン・ルー
9a/9a+:ジョスネ・ベレシアルトウ(スペイン、バスク)、Bimbaluna、2005年5月、スイス、サン・ルー
9a+:マーゴ・ヘイズ(米国)、La Rambla、2017年2月、スペイン、シウラナ
9b:アンゲラ・アイター(オーストリア)、La Planta de Shiva、2017年10月、スペイン、ビジャヌエバ・デル・ロサリオ
9b+:ブルック・ラブトゥ(米国)、Excalibur、2025年4月、イタリア、アルコ

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