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ララ・ノイマイヤー、Psychogramm(8b+、トラッド)女性初完登
文=Dave Yarwood
訳=羽鎌田学
3月5日、ドイツ人女性クライマー、ララ・ノイマイヤーがオーストリア最西端フォアアールベルク州にある岩場ブリューザー・プラッテのトラッドルートPsychogrammの第5登を達成した。これは同時に、女性クライマーとしての初完登でもあった。
このルートは、2014年2月に地元オーストリア人クライマー、アレックス・ルガーによってトラッドギアをプロテクションにして初登され、そのグレードは8b+(5.14a)とされている。Psychogrammは、危険度が高く、ルート上の場所によってはフォールすると怪我を負うリスクが大きいことで知られている。同ルートを2015年に第3登したヤーコポ・ラルケルは次のようにコメントしている。「Psychogrammは、ボルダリーで、小さなナッツをプロテクションにしての激しいランナウトが特徴的なルートです。そのランナウトするパートの最後で落ちるとかなり危険です」
ララは、計7日間、ヘッドポイントを目指してルートにトライしたのち、3月5日に初めて最終的なリードに挑戦し、最初のトライで見事に完登した。言うまでもなく、彼女は登りながら全てのプロテクションをセットしている。
以下はララのコメント。
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ブリューザー・プラッテにあるPsychogramm(8b)は、ルート名が全てを物語っているルートです。これを登るには高いクライミングスキルが求められ、プロテクションとしてもっぱら小さなサイズのギアを使用するので、精神的にも厳しく、まさにチャレンジングなルートです。
昨年秋にミヒ(ミヒャエル・ヴォールレーベン、ドイツ人クライマー、2019年12月同ルート第4登)と話して以来、いつかこのルートを登ってみたいという思いが常に頭の中にありました。このルートは恐ろしいことで知られ、再登者はわずかでしたが、年が明けて1月中旬にブリューサー・プラッテに行き、トライしました。
寒さが厳しい日で、理想的なコンディションではありませんでしたが、核心ムーブを解決することができました。核心はリーチが必要なムーブとして知られていたので、解決できてとてもうれしかったです。しかし、その時はモチベーションも高かったのですが、いったん引き上げ、もう少し暖かくなったら戻ってくることにしました。
2月末にブリューサー・プラッテに戻りました。日中ははるかに暖かく、陽も高くなり、それだけ岩も温まってしまい、登れる時間は夕方に岩場が日陰になってからで、1日に1~2時間に限られていました。1月の時よりも気温が上がったせいで、核心は非常に難しく感じられ、10回のうち1回しかそのムーブを決めることができませんでした。小さくて鋭いエッジのハンドホールド、微小なフットホールド、そしてプロテクションとしての限られた数のマイクロナッツが、ルートをスパイシーに、恐ろしいものにしていました。私は、本当にルートを安全に登ることができるのか、リスクを冒すだけの価値はあるのか、と疑い、考え込んだこともありました。
それでも、私はトライし続けました。4日目にはトップロープでノーテンで登ることに成功し、5日目にはルート上にセットするギアをチェックして、その結果、マイクロナッツをいくつか追加注文しました。6日目には、トップロープでしたが、ギアをセットしながら登り切ることができました。それで、やっとリードする準備が整ったと感じたのです。
初めてリードでトライする前夜、私はヤーコポ・ラルケルと一緒に彼が登った時の写真や映像を見直し、彼はその時彼が実際にセットしたマイクロナッツをいくつか私に貸してくれました。翌日トライ7日目、私は日中にもう一度スタティックロープを使ってトップロープで登り、ギアをセットする場所を少し調整しました。そして夕方、ついにその時が来たのです。ヤーコポとカラム・マスケット(イギリス人クライマー)の2人をビレイヤーとして、私はリードでのトライに挑戦しました。グランドフォールを防ぐためにロープを2本使いました。
少しナーバスになっていましたが、モチベーションも高く、十分に準備ができていると感じていました。ギアをセットするのに疲れましたが、最初のパートはスムーズにこなすことができました。核心では、技術、精度、プロテクションへの信頼など、全てが求められました。核心のムーブをなんとか決め、その後は最後のプロテクションを遥か足元にして登り続けました。終了点までは大きくランナウトし、最後の数ムーブは少しおぼつかなくなってしまいましたが、私は諦めませんでした。最後のムーブ、最後のホールド、そして終了点にクリップ。ついに登り切ったのです。素晴らしい経験でした!
※ビュルザー・プラッテは、オーストリア・クライミング界の大御所ビート・カマランダーが2009年3月に初登した有名なPrinzip Hoffnung(8b+)を筆頭に複数のハード・トラッドルートを擁する壁。ビュルスの街外れに、その名の通りプラッテ(ドイツ語「板」)のように聳えている。
※ララ・ノイマイヤーは、2023年11月にヨセミテ、エル・キャピタンのマルチピッチ・フリールートEl Corazón(900m、5.13b)を、オーストリア人女性クライマー、バルバラ・ツァンガールと共に女性2人だけで、Muir Blastからスタートし完登している。