パリ五輪 応援企画 スポーツクライミングを徹底解析<スピード編>
文=植田幹也 イラスト=越井 隆
東京2020オリンピックから登場した スポーツクライミング。まだまだその競技自体に馴染みがない方も多いかもしれません。 この記事では観戦初心者の方に向けて、 スポーツクライミングの見どころやルールを紹介します。当ページでは、スピードの見どころやルール、素朴な疑問などを解説。
見どころ
スピードの見どころは疾走感はもちろんのこと、そのわかりやすさも魅力の一つ。ボルダーやリードがルールや得点計算が複雑なので初心者が100%理解しながら観戦することは難しいのに対して、スピードは2選手が並んでどちらが速くゴールに到達できるかを競うので初見でもルールと勝敗が理解できます。
またボルダーやリードと違って毎回同一のコースを選手は登ることも大きな特徴の一つ。選手たちの速さを究める ために無駄を削ぎ落して洗練された登りは非常にエキサイティングです。2024年5月現在の男子のワールドレコードは4.798秒なので、世界新記録が出るか否かという点に注目するのも良いでしょう。
ルール
高さ15mのルートにトライしその速さを競います。 リードと同様に選手には安全確保のロープが付いています。パリオリンピックには男女各14人が参加します。競技は「シーディングラウンド」→「予選」→「決勝トーナメント」の順に進みます。シーディングラウンドでは選手は2回トライすることができ、より速い方のタイムを用いて1~14位の順位がつきます。
続く予選ではシーディングラウンドの「1位vs14位」「2位vs13位」というように選手が1対1で、隣同士のレーンで登りタイムを競います。ここでの勝者7名に、負けた選手の中で最もタイムの良い1名を加えた計8名で決勝トーナメントを組みます。決勝トーナメントでも予選と同様に1対1で、先にゴールした選手が勝ち上がっていくことで優勝者を決めます。
なおいずれの ラウンドにおいてもフォルススタート(いわゆるフライング)をした場合はそのラウンドにおいて最下位の順位がつきます。
Q. どこがスタートライン?どこがゴール?
地面においてあるスタートパネルから足が離れなければどこからスタートしてもOKです。身長や男女の違いで微妙にスタートの仕方が違うところに注目してもおもしろいかもしれません。 壁の一番上にはゴールパネルが設置してありそれをタッチすることでゴールが認められます。
Q. 登るのに使っていないホールドがあるのはなぜ?
今のスピードのコースは何年も前に設計されたものから変わっていません。そして選手がより速く登る研究を積み重ねた結果、あえていくつかのホールドを飛ばしてしまう方が効率が良いと判明していき一部のホールドが使われなくなりました。
ホールドを飛ばす動きの中にはいくつか有名なものがあり、その内の一つで4番目のハンドホールドとその際のフットホールドを使わない動きは楢﨑智亜選手が最初に始めたため「トモアスキップ」と呼ばれています。
Q. なぜスピードだけ別種目になったの?
ロッククライミングはその冒険性から、まだ見たことのない岩壁にチャレンジしそれが登れるかどうかということが重要視されてきました。ですので毎回同じルートにチャレンジするスピードは精神性が少し違う競技だと言えます。
またボルダーやリードでは指の強さや繊細な足さばきが求められるのに対して、スピードは瞬発力を発揮することが 圧倒的に重要だという身体性の違いもあります。これらの理由からスピードとボルダー/リードをやる選手層はあまり被っていないため、スピードが別種目として切り出されたのだと思います。
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*当記事は、スポーツクライミングの観戦や始め方などが詳しく紹介されているクライミングビギナー向けムック「2024パリ五輪スポーツクライミング観戦ガイド #CLIMBING」の内容を一部編集・再掲載しています。
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