パリ五輪 応援企画 スポーツクライミングを徹底解析<ボルダー編>

文=植田幹也 イラスト=越井 隆

東京2020オリンピックから登場したスポーツクライミング。まだまだその競技自体に馴染みがない方も多いかもしれません。 この記事では観戦初心者の方に向けて、スポーツクライミングの見どころやルールを紹介します。当ページでは、ボルダーの見どころやルール、素朴な疑問などを解説。

見どころ

ボルダーの見どころは短い手数の課題の中で、選手の力と技が凝縮され披露される点です。ボルダーでは時間内ならば選手は何度でもトライできるので、課題を作るセッターは1手1手で選手の限界を引き出すような動きを設定します。

その難課題に対して選手が攻略法を解き明かしつつ、日ごろ鍛えたパワーとテクニックで攻略していく様は見ごたえ抜群。ダイナミックな動きからじわじわとした緊張感のある動きまで様々なクライミングの技が繰り出されることも観戦を盛り上げる要素です。

日本はボルダーが強い選手が多く世界からも強豪国として見られています。複合種目の最初のボルダーで良い順位に位置付けられるかがメダル獲得の鍵を握るでしょう。

ルール

ボルダーは高さ4~5m程度の壁に課題が全部で4つ用意されます。下には衝撃を吸収する安全用のマットが敷かれているので選手は命綱なしで登ります。

選手には各課題4~5分の競技時間が与えられ完登(登り切ること)を目指します。完登した場合は1課題につき25点が入ります。完登できなくても、2つ設定されたゾーン(途中の到達点)のうち、1つ目のゾーンまで到達 すれば5点、2つ目のゾーンまで到達すればさらにプラス5点入り計10点を獲得できます。

またボルダリングは基本的には少ないトライ数が評価されるので、2トライ目以降はトライ数×0.1点だけ獲得点数が下がってしまいます。  例えばある選手の競技結果が以下であったとき、

1課題目を1トライで完登:25点
2課題目を2トライで完登:24.9点
3課題目を1トライで1つ目のゾーンまで:5点
4課題目を3トライで2つ目のゾーンまで:9.8点  

この選手は合計64.7点を獲得します。

Q.あの棒みたいなものでなにをしているの?

あの棒はブラシです。ボルダーは特に全てのムーブが限界ギリギリでシビアなので少しでも汗、過剰なチョーク、靴のソールの汚れなどがホールドに付いていると選手はパフォーマンスを100%発揮することができません。そこでトライするたびにブラシでホールドを磨いているのです。

Q.どうして 同時に登っているの?

ボルダーは1つのラウンドで1人あたり 4つの課題に挑戦し、1課題あたりの制限 時間は4~5分です。予選は20人、決勝は8人がトライすることになるので1人ずつ登っていると膨大な競技時間になってしまいます。ですので1課題目から4課題目まで選 手が流れるように順番に同時にトライすることで競技時間の短縮化を図っているのです。

Q.ボルダーの課題は誰が作っているの?

プロのルートセッターが作っています。セッターは数人チームで何時間もかけて1つの課題を作り上げます。選手全員が登れなくても逆に全員が1撃してしまっても大会は成功しないので、セッターは絶妙な難易度の設定が求められるシビアな仕事なのです。また大きな大会では課題のビジュアルの良さや選手の登りが映えるかなども大切な要素です。

▶️パリ五輪 応援企画 スポーツクライミングを徹底解析<観戦に役立つ用語編>を読む

 

*当記事は、スポーツクライミングの観戦や始め方などが詳しく紹介されているクライミングビギナー向けムック「2024パリ五輪スポーツクライミング観戦ガイド #CLIMBING」の内容を一部編集・再掲載しています。

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