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ヤーニャ・ガーンブレット、オリアナでFish Eye 8cをオンサイト。女性クライマーによるオンサイトグレードを更新
planetmountain.com 訳=羽鎌田学
ヤーニャ・ガーンブレットが、スペイン、カタルーニャ地方、オリアナの岩場でFish Eyeのオンサイトに成功した。22才の彼女は、8cをオンサイトした初めての女性クライマーとなったのである。
Fish Eyeは、ルンバウのバットレスと呼ばれるオリアナの岩壁に引かれた長さ50mにもおよぶエンデュランス系を代表するテストピース。それを非の打ちどころのないスタイルで登った彼女は、クライミング史の中でも大いなるチャレンジング課題のひとつとされている偉業を達成し、自身の歴史的地位をより強固なものにしたとも言える。
Fish Eye(8c)をオンサイトするヤーニャ・ガーンブレット
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8cのオンサイトに初めて成功したクライマーは、平山ユージ。2004年にスペイン、バスク地方のバルツォーラでWhite Zombieを見事一撃した。その後、複数の男性クライマーが、やはり8cとされるルートのオンサイトに成功しているが、それは未だ少数の選び抜かれたアスリートたちのみがなし得るパフォーマンスといえよう。今回、ヤーニャが女性クライマーとして初めてオンサイトしたFish Eyeを初登したのは、クリス・シャーマ。2009年のことだ。その後、同ルートはたびたびオンサイトクライミングのターゲットとされ、2014年にはラモン・ジュリアン・プッチブランカ、2016年にはパチ・ウソビアガ、2017年にはステファノ・ギゾルフィが成功している。
その一方で、女性クライマーたちも、男性クライマーたちの独壇場であった8cのオンサイトという世界に次第に近づきつつあったのも事実である。最近まで彼女たちが成し遂げた最高のパフォーマンスは、8b+のオンサイト。それに成功した女性クライマーは、2006年のジョスネ・ベレシアルトゥ、2010年のシャルロット・デュリフ、同じく2010年のマヤ・ヴィドマル、2011年のサーシャ・ディジュリアン、2016年のカイサ・ロセアン、2019年のアナック・ヴェルホーヴェン、2020年のラウラ・ロゴラ。そして今年、マルティナ・デンメルとヴィータ・ルーカンの2人が、8b+のオンサイトに成功している。
ヤーニャ・ガーンブレットと言えば、無敵のコンペクライマーとしてよく知られた存在である。この夏の東京2020オリンピック競技大会で新競技種目となったスポーツクライミングで初代金メダリストとなり、それまでも、30以上のワールドカップで優勝し、年間チャンピオンの座には6度輝いている。その傍ら、アウトドアで岩を登ることは稀ではあったが、決して外岩でも実力を誇示することを忘れてはいなかった。僅か15才の時には、既に8bをオンサイトし、2015年には8c+をレッドポイント。2016年には8cをフラッシング。そして2017年には、大した苦労もせずに9aを登っている。
そして今度は、誰もが憧れる8cのオンサイトを達成した初女性クライマーというタイトルを手に入れたヤーニャ。持って生まれた天性と不断の努力のおかげで同世代のクライマーの中でも最も有望な一人としてより広く認められた彼女は、今一度、一層の高みを目指し登り続けることだろう。
追記:
彼女は、Fish Eyeをオンサイトした2日後に、やはりオリアナで2本目の8c、American Hustleをオンサイトしている。彼女の快進撃は止まらない。